車 体(その6)


【検査関係標記板】

さて、検査関係標記板には複数の種類があります。
それを見ていきましょう。



コキ104と言えばこの形を思い浮かべると思います。
模型でもお馴染みです。



ご覧のように車両によって取り付け位置の低い高いがあります。
また右にある修繕票挿しは標記板にそのまま付いています。

観察ノートに書く都合で私は勝手にこれをA型とし、票挿しが平たく付いているので
「Aのヒ」と呼んでいます。

この「Aのヒ」は川重、日車とも新製〜1992(平成4)年製造の車両に付いています。



続いて左下が大きく切り取られました。



やはり手前にある修繕票挿しは板に平たく付いています。
これはB型とし「Bのヒ」と呼んでいます。

この「Bのヒ」は川重、日車とも1991(平成3)年製造の車両から付いています。



続いてはまたB型ですが…



修繕票挿しが斜めに取り付けられるようになりました。
ですのでこれは「Bのナ」と呼びます。
ちなみにA型で斜めに取り付けられているものはありません。

この「Bのナ」は川重、日車とも1992(平成4年)製造の車両から付いています。
以上のことから分かるように「明確に○番から変更になった」ということはないようです。
改良はされていったものの、改良前の部品も残っているので
各部品を平行に使用して製造していったと推測されます。



修繕票挿しの使用例です。
ちなみに挿してあるのは「白票」と呼ばれるもので
検査や調査、あるいは修繕のため回送させる車両に表示されています。



なるほど、こう見ると斜めの方が抜き挿しはやり易いですね。



なおコキ104のうち海上コンテナ輸送用(Mコキ)への改造車は
緊締装置の取付板設置の関係で、検査関係標記板が内側へ移設されています。
Mコキ改造車は元がA型でも全て「Bのナ」に交換されています。



ちなみにコキ106、107も共に、全て「Bのナ」です。



大きさはコキ104と同等のようです。



コキ200は切り取りの無い長方形の「C型」が付いています。



C型は今のところコキ200のみです。分類は「Cのヒ」で票挿しが斜めのものはありません。


[取り付け位置]



A型の場合、先の画像のような例外もありますが
原則、上梁の下部を基準に取り付けられています。



B型の場合は反対に上梁の上部を基準に取り付けられています。



しかし同じB型でもMコキ改造車は上梁の下部を基準に取り付けられています。
個体差もありますが、よく見ると下梁の下部から少しはみ出ているのが分かります。



同じくB型のコキ106、107は共に上梁の下部を基準に取り付けられています。



C型は上梁の上部を基準に取り付けられています。


【特殊な例】

検査関係標記板は原則1位側、2位側とも同じ形の物が取り付けられていますが
コキ104の1991(平成3)年〜1992(平成4)年ロット車には川重、日車とも
「Aのヒ」と「Bのヒ」の2種類が取り付けられています。



一例として1992(平成4)年ロットの日車製[1148番]をあげます。
1位(@-B位)側には「Aのヒ」が取り付けられています。



反対の2位(A-C)側はご覧の通り「Bのヒ」が取り付けられています。
面白い事に川重、日車とも@位側に「Aのヒ」、C位側に「Bのヒ」と決まっているようです。

ロット製造全車がこの仕様と思われますが、数が多いので観察が追いつきません。
また1993(平成5)年ロットの日車製[1435番]も同仕様なのを確認しています。
多少の前後ズレはあるのかもしれません。


【票挿し】

コキ車に限らず、貨車には票挿しがいくつか付いています。
それらを見ていきましょう。



票挿しと聞いてすぐに思い出すのが車番の下にあるこの二つでしょう。
左の横長のものが「車票挿し」、右の縦長のものが「表示票挿し」です。

以前はその貨車の行き先等を示す車票が挿してありましたが
IDタグ等による車両管理により、票挿しが使われなくなって久しいです。



しかし全く使用されない訳ではなく、その用途により票を挿します。
画像は伊豆箱根鉄道、大雄山線車両の検査による甲種輸送の際に使用された例です。
車票により、このコキ車が相模貨物駅から沼津駅へ向かう事が分かります。
右下の赤い印は空車を表します。赤い印の横には「介在車」と書かれています。



余談ですが伊豆箱根車両の受け渡しはJR線と大雄山線を結ぶ渡り線を使用します。
直接機関車が乗り入れるのではなく、コキ車が渡り線をまたいで停車し受け渡しをします。
つまり介在車というのは昔で言うところの控車のような用途で使用されます。



アップで見ます。車票に目が行きますが票挿しをご覧ください。
車票は上から挿しこむので票挿しを取り付けの際に間違えないように上部の角は斜めになっています。
車票自体も中央上下にあるボッチで押さえられています。



また一部の車両には下部中央に補強のような物を取り付けています。



こちらもアップで見ます。
造りは単純でクランク状に加工した平板を溶接しています。
ご覧の通りその大きさ(長さ)はまちまちです。

確認した車両は[コキ104-40、90、614、844、1473、1681…等]ざっと数えただけでも
30両以上おり、一部とはいえそれなりの数の車両が追加加工されています。



ちなみに検査をする工場等では作業状況を記録する
メモ挿しとしても使用されています。



続いて表示票挿しを見ます。
こちらも上下を間違えないように上部角が丸く加工されいます。

挿してあるのは「列車指定表示票」です。
左に書いてあるのは列番ではなく、貨物取扱駅のコードです。
4548は相模貨物駅、4552は小田原駅、5203は沼津駅を表します。
画像の票は相模貨物駅から小田原駅までを23日の9865列車
小田原駅から沼津駅までを9867列車へ連結し、
沼津駅到着後は9074列車へ連結し上っていくようです。



もっともこの介在車コキ3両(+甲種車両)で一つの列車を成しているので
○○列車に連結、ではなく○○列車に使用という意味合いの方が強いのかも知れません。



ある日、危険品表示票を挿しているコキ車を発見しました。
しかしよく見ると貨物取扱駅コードも列番も書かれていません。
枯れ木に遮られて全体は撮れませんでしたが、積載されていたのは普通の12ftコンテナで
コンテナ自体の票挿しにも危険品を表す票は挿してありませんでした。
なぜ危険品表示票が挿してあったのかは謎です。

すいません、ちょっと余談が長くなってしまいました。



表示票挿しと同じ縦長の票挿しですが、こちらは検査関係標記板に付いている修繕票挿しです。
表示票挿しと共通部品かと思いましたが、よく見ると下部角も丸く加工されているので違う物のようです。
角丸の大きさも違いますね。

白票は使い捨てではなく、消して何度も使用できるエコ仕様です。



ちょっと気になって手持ちの車票の大きさを比較してみました。
手前が修繕票挿しに入れる初運用表、奥が表示票挿しに入れる列車指定表示票です。
こんなに大きさが違うのでは共通の部品は使えないですね。



下部の影で分かるように票挿し下部の抜け落ち防止は全体ではなく
車票挿しは左右、表示票挿しは反対に中央部にあります。
先の補強のようなものは追加の抜け落ち防止なのかもしれません。



ちなみに票挿しの取付基準は「下から」ではなく「上から」のようです。



そのため台枠側面の短いコキ106は票挿しと下部梁との距離がほとんどありません。



票挿しも破損等により交換されます。
色からするとコキ107用の部品を流用したと思われます。



こちらは交換後塗装した例です。
塗り残しを見ると元の色は白色な感じです。



こちらは表示票挿しが交換されています。
車票挿しに補強もありますね。



修繕票挿しの交換例です。
よく見ると元の位置よりも中央に寄っています。
ネジ穴が再利用出来なかったのでしょうか?



仕立検査票挿しにも交換例があります。



破損例です。割れてしまうんですね。
錆が浮いているので鉄製と思われますが、断面を見ると樹脂っぽい感じもします。


【仕立検査票挿し】

検査関係標記板に付いている小さな票挿しで交番検査票を挿します。
古い資料を参考にしたので、今は違う名称かもしれません。
なおJR貨物では票挿しのことは「票ワク」とも呼んでいるようです。



さて、この検査関係標記板を見て何か違和感を覚えませんか?



そうです。挿してあるはずの交番検査票が無いのです。
気付いた当初は盗難かと思ったんですが、無い車両が多くそれは違うと分かりました。

挿さなくなったのは年度が変わった2022(令和4)年4月からで、約二ヶ月間で全車から撤去されました。
思うにペーパーレス化の一環なのでしょう。各車の情報はIDタグで管理されていると予想されます。



これが以前の姿です。やはり挿してある方がしっくりきます。
個人的には検査関係標記板を撮影した時にこれが挿してあると車号が分かるので
大変重宝していたんですが…。



よくよく考えてみると西暦標記+交番検査票の組み合わせは
僅か2年程度だったんですね。



以前はすぐ抜けないようにテープで蓋までしていた車両もいたのに。
時代ですかねぇ。



ある日観察をしていると仕立検査票挿しが無い車両に遭遇しました。
画像は[コキ104-2782]です。

ちょっと動揺しましたが反対側には票挿しが付いており、また他の車両には変化はなかったので
使わなくなったから意図的に取り外したのではなく、破損して補修部品待ちと思われます。
しかし不要部品としてこのまま修理しない可能性もあります。

他車も含めて今後を見守っていきたいと思います。


【パッチ】

一部の車両に取り付けられている補強板です。
[車体の違い]で紹介したブレーキ制御装置の操作口の部分にあたります。



従って2位(A-C位)側のみの取り付けです。
パッチは川重製のみに見られ、日車製にはありません。




もちろん単なる補強板なので



点検口の位置は変わりません。



アップで見ます。全周が溶接留めされています。
幸いパッチはエッチングパーツで製品化されており容易に再現できます。
ただ車体に貼るだけではなく、縁を耐水ペーパーなどでひと舐めして角を落とし
車体に馴染ませると良いでしょう。孔を開けられれば尚良しです。



操作口の中を覗いてみます。
丸い機器とコックが2本見えますね。
パッチなしの車両も中身は同様です。



さて上の画像はパッチなしのコキ車ですが、台枠の板が痩せてきたのか
操作口の周りにパッチ的な何かが浮かびあがっています。



裏を見ると何とやはりパッチが!
外側に無くても「裏パッチ」があるんですね。



観察すると日車車体の長孔にもそれらしきものが見えます。
果たして…?



少し分かりにくいですが、長孔用裏パッチもありました。
ですので、先の記述は

「外パッチ」は川重製のみに見られ、日車製にはありません。

と訂正いたします。


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