東芝府中のモ803



800系のうちモ803、モ806、モ807の3両は同系列では最も早く1969年に廃車になっています。
806、807は解体されてしまいましたが、803はサイリスタ制御の試験車として
使用されるため同年、東芝へ譲渡されました。


'80年代の中頃だと記憶してますが、府中本町へ貨物列車の撮影に行きました。
以前より東芝の府中工場が武蔵野線から望めると知っていたので
「もしかしたら何かあるかも」と淡い期待を胸に車中の人となりました。

車窓から見覚えのある古い車両が見えました。すぐあれがモ803だと思いました。
興奮しつつ折り返し、なんとか押さえたのがこの一枚です。

今なら何度も折り返したり、歩いて現車を見に行くところですが
当時は今よりも貧しい学生で、僅かな電車賃も惜しんで遠征費やフィルム代に回していました。
またこの写真からも分かるように下周りは板で見えず、更に手前の武蔵野線は
一段高いところを走っている為、近付いても撮影は困難と判断し徒歩見学は断念しました。




写真は連結面側です。ステーの長い前照灯と、フェンスの陰で分かりにくいのですが
尾灯が新設されています。尾灯は運転台側から持ってきたのかも知れません。
この仕様ですと両運転台に改造されたとも予想できますが、単に推進運転用に設置しただけの可能性もあります。
戸袋窓は木枠で側引戸もオリジナルの木製のようです。廃車された時の最終形態が垣間見れます。

車体色は一見、色褪せた特急色のようですが、譲渡された時は
ダークグリーンのはずですから東芝側が塗った塗装です。
元からローズピンクだったのか、赤色が退色したのかは分かりません。


譲渡されて15年位経っているこの車両が残っていたのはある意味奇跡的でした
おそらくこのまま解体されたものと思われます。
モ803の最後の姿を撮影出来て本当によかったです。


← 目次にもどる

inserted by FC2 system